今度の会社の集団検診で、乳ガンと診断されたらどうしよう、ドキドキ・・・
と、いう方へ
落ち着いて。
情報によると、
乳ガン検診で3分の1の女性は、
必要のない乳癌治療を受ける可能性があるようです。
今回は、乳ガン検診の過剰診断の話です。
■もくじ
- 乳ガンの過剰診断とは
- 過剰診断で3分の1の女性は必要のない乳癌治療を受ける可能性が
この記事を書いているの僕(コータロー)は、健康食品を販売して15年ほど。
乳ガンの過剰診断とは
ガンにはおおよそ4種類ある【乳ガンと診断されても慌てないために】
乳ガンは増加の一途をたどっています。下のグラフを再掲しますが、時代を経るごとに乳ガンになる人が多くなっていくのが分かります。
とくに驚くべきことは、、、
- 2000年から2010年にかけておよそ2倍に増えており
- 1975年から2010年にかけては、6.8倍に増えています
どうしてこんなに増えたのかというと、
乳がん検診(とくにマンモグラフィ)が患者の発掘に努めたから
乳ガンの過剰診断の実態
乳ガン検診をすればするほど、乳ガンを早期発見することができる様になりました。その乳ガン検診の甲斐あって、多くの人々が乳ガンを克服できました。
とても悦ばしいことですが、問題もあります。それは、、、
乳ガンの過剰診断によって必要のない乳癌治療を受けていること
そもそも癌は大別すれば、4種類ある
ダートマス大学教授で、医師でもあるギルバート・ウェルチ氏は、癌の進行の過程を大まかに4つに分けています。
- Aは生長が極めて速くたちまちのうちに宿主(ひと)の命を奪ってしまうがん
- Bは生長はそれほど速くないがやがて症状が現れいずれ命を奪うことになるがん
- Cは生長が遅く命を奪うほどには進行しないがん
- Dはほとんど生長せずときには退縮してしまうこともあるがん
癌検診によって、、、
癌を発見できても、寿命を全うできるものまでも見つかるようになった
要は、、、
- AとBは、人の命を奪う癌
- CとDは、乳ガン検診で発見されても治療をしなくてもよい癌であり、乳房を切除することもない癌
このような現象を【過剰診断】と呼びます。
乳ガンの過剰診断とは?
厚生労働省では、癌の過剰診断を以下のように説明しています。
- 病理学的にがんでないものをがんと診断したという意味ではない
- がんの成長速度と個人の余命の長さで決まる
- 他の不利益と異なり、途中の過程で間違った判断がされた結果ではない
- 個々のがんについて、過剰診断かどうかを判断することは困難
- 集団としての罹患率が期待以上に増えることを証拠としている
・検診評価のためのランダム割付試験
・罹患率の年次推移
【検診による不利益】
がん検診のもたらす利益と不利益
利 益 |
がん死亡の減少 |
がん患者のQOLの向上 |
がん患者の医療費の削減 |
真陰性者の安心 |
不 利 益 |
偽陰性者の治療遅延 |
偽陽性者への不必要な検査と不安 |
検診にともなう合併症 |
寿命に比べて臨床的に意味のないがんの診断治療(広義の過剰診断) |
検査結果 | 疾患あり | 疾患なし |
陽 性 | 真陽性 | 偽陽性 |
陰 性 | 偽陰性 | 真陰性 |
がん検診の利益(メリット)死亡率減少 | |
がん検診の利益(メリット)は、がんの早期発見により、がんで亡くなる方が減ることです。住民検診(⇒参考1参照)では、特に、この死亡率減少効果が重視され、原則として死亡率減少効果のある方法が検査方法として推奨されています。なお、現在、乳がん検診で死亡率減少効果があると確認されている方法はマンモグラフィのみ 6)であり、住民検診はマンモグラフィで行われています。 | |
がん検診の不利益(デメリット) | |
偽陰性(検査には限界があり、がんが 100%見つかるわけではないこと) | |
がんがあるにもかかわらず、検査で異常なしと判定されることを、「偽陰性」といいます。どんな優れた検査でも 100%がんを発見できるわけではありません。マンモグラフィや乳房超音波検査で発見できないがんもあります。 | |
偽陽性 (結果的に不必要な検査を受ける可能性があること) | |
がんがないにもかかわらず、検査で「精密検査が必要」と判定されることを、「偽陽性」といいます。偽陽性の場合、結果的に不必要な検査を受けることで、体に負担をかけてしまうことがあります。 | |
過剰診断 | |
検診では、その人の命を奪わない成長の極めて遅いがんを見つけてしまう可能性があります(過剰診断)。このようながんは、生涯症状がなく命にも影響しないため、見つけてしまうことでかえって不要な治療を受けることとなり、受診者の不利益となります。 | |
被ばく | |
マンモグラフィでは、放射線被ばくによる乳がんの誘発が、極めて低い確率ではありますが、存在します。 | |
心理的影響 | |
がん検診を受け「精密検査が必要」とされた場合は、精密検査やその検査結果が判定されるまでの間に、不安などによる、心理的負担を受ける可能性が考えられます。 | |
がん検診には、代表的なものとして上記のような利益、不利益があり、対策型検診(住民検診)では、集団としての利益が不利益を上回ることが重要です。また、受診者も、がん検診を受ける際には、利益ばかりではなく不利益もあることを理解しておくことが重要です。 |
→ がん検診(住民検診)の利益(メリット)と不利益(デメリット)について
過剰診断で3分の1の女性は必要のない乳癌治療を受ける可能性が
デンマークの研究者たちは、【集団検診の結果、乳ガンの過剰診断にいたり、過剰診断で3分の1の女性は必要のない乳癌治療を受ける可能性がる】と報告しています。
くり返します。
- 過剰診断で3分の1の女性は必要のない乳癌治療を受ける可能性がある
アメリカでは、乳ガンは女性のガン死亡率の2位と非常に多く、毎年約18万人が乳ガンと診断されています。その乳ガンのうち、、、
- 実際には治療の必要がない
- 進行が遅く、患者に影響がない
- 乳ガンと診断され、身体的・精神的ストレスを受ける不利益
と、いった女性たちも多いのが現状です。
米国のマンモグラフィによる乳がん検診と早期乳がん・進行乳がん罹患率の推移
下のグラフは、アメリカのデータですが、マンモグラフィによる検査が普及すればするほど、乳ガンの罹患率が上昇しているのが分かります。
しかし、、、
死に至る乳ガンの推移は、ほとんど平行線です。
このグラフでいえることは、、、
- 40歳以上ではマンモグラフィの導入に伴って早期乳がんの罹患率が増加しており
- 進行乳がんの罹患率が減少している
- 40歳未満では早期乳がんも進行乳がんも大きな変化がない
2000人のうち10人の健康な女性ががんと過剰診断される可能性
臨床試験を評価・分析している英国のコクランレビューのデータですが、マンモグラフィ検査を調べ、10年間にわたって2000人の女性をスクリーニングすれば、、、
- 10人の健康な女性ががんと過剰診断される可能性があり
- 乳がんによる死亡を1人減らすことができる
この10人の女性は、、、
- 6人が腫瘍摘出術
- 4人が乳房切除術
を受けることになります。
また、、、
- マンモグラフィ検査でその後の精密検査が必要になった200人ががんが見つかるかもしれないという大きな不安という心理的な不利益を被ります
乳ガンの過剰診断から逃れる方法は
乳ガンの過剰診断が多い現状から、欧米では以下のような処置が執られました。
- 無症状の40歳代の女性にマンモグラフィ検査を行う場合は、これらのデメリットも十分説明した上で実施すべき
- マンモグラフィ検査で見つかるがんには、とても微小で乳管の外には広がらない性質の非浸潤性乳管がん(DCIS)が多い
- マンモグラフィ検査で早期発見されても、その後の死亡率に大きな差がないこと
日本での乳ガンの過剰診断の対策は
欧米での受診率70~80%に対し、日本の受診率は20%台と低いのが実情です。
ですから、マンモグラフィ検査を受けるときには、、、
- 熟慮した上で乳房超音波検査などを組み合わせるとリスクを減らすことができます
乳ガン検診の結果を医師に任せっきりにしないこと
マンモグラフィ検査で乳ガンと診断されたら不安でたまりません。が、その診断するドクターも大変だということを理解することも必要です。
たとえば、
あなたが、乳房に異常を感じてかかりつけのお医者さんに相談します。
あなた:先生、おっぱいにしこりを感じるのですが・・・
お医者さん:では、精密検査をして専門医に診てもらいましょう
乳ガンでなければ、、、
あなた:ああよかった!先生、ありがとうございます!
と、なりますが、乳ガンだったとしても、、、
あなた:おかげで早期に発見できました。ありがとうございます。
しかし、お医者さんが、乳ガンの過剰診断のことを考えて、精密検査を勧めなかったら、、、
あなた:もしかしたら乳ガンかもしれないのに、なんで精密検査を勧めなのだろう
あなた:心配して相談したのに、あの先生のために早期治療ができない・・・
と、かかりつけ医を危ぶみ、このお医者さんは評価が下がります。お医者さんの方も大変ご苦労だというわけです。
ややもすると、その後乳ガンにでもなり死亡すれば、訴えられかねません。
ですから、、、
乳ガン検診は、プラス面とマイナス面があることを承知の上で受けるべき
お医者さんの方でも、乳ガン検診で患者さんを被爆させたくないと思っているでしょうから。
マンモグラフィ | 乳房超音波 | |
利点 |
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欠点 |
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(注1) マンモグラフィに伴う疼痛は個人差があります。また月経周期の時期でも多少は異なります(排卵後から月経直前では乳房がしばしば硬くなるため、痛みも増す可能性があります)。月経のある方の乳がん検診はできれば月経開始5日~7日ぐらいの頃に受けていただくほうがお勧めです。この時期であれば妊娠の可能性も低く放射線検査も心配ありません。
(注2) X線検査のため多少は放射線被ばくがありますが、乳房の局所的なものです。また1回に被ばくする放射線量はごく微量であり、全身に影響したり、骨髄抑制や白血病、発がん等の可能性はまずないと考えてください。
丸の内クリニック:マンモグラフィと乳房超音波、どちらを受ければいいの?
以上。
また、次回。